腸炎ビブリオは魚介類に多く存在する細菌です。腸炎ビブリオが引き起こす食中毒は、夏場に多く発生し、魚介類の生食の多い日本においてサルモネラ菌と並び発生例の多い食中毒です。ここでは、腸炎ビブリオの特徴や食中毒にならないための注意点などを解説していきたいと思います。
腸炎ピブリオとは
腸炎ビブリオとは、コレラ菌と同じビブリオ属に属する細菌で、昭和25年の大阪府での「シラス食中毒事件」をきっかけに発見されました。
海水中に生息する細菌で、塩分3%でよく発育しますが、真水では生きられません。海水温が20度以上になると大量に増殖するので、夏場に食中毒が起こりやすいです。
しかし、最近では海外からの魚介類の輸入も増え、季節を問わず食中毒が発生する事例もあります。また、加熱処理すると他の菌と同様に死滅します。
潜伏期間はどれくらい?
潜伏期間は、10~20時間です。腸炎ビブリオ菌で汚染された魚介類、特にカニやカキ、エビを生や未調理で食べることにより感染します。
潜伏期間の後、激しい腹痛や下痢、嘔吐、発熱(あまり高くない) といった症状が現れます。大部分は特別な治療もなく、数日で治癒しますが、まれにチアノーゼやショック症状も見られます。
高齢者等が感染するとまれに低血圧や心臓麻痺を起こし死亡する例も報告されています。これらの症状を引き起こす病原因子として、「耐熱性溶血毒(TDH)」や「その類似毒(TRH)」が挙げられます。
うつることもあるの?
腸炎ビブリオは人から人へうつることはありません。腸炎ビブリオ菌に汚染された食材を摂取することで感染するので、調理の段階で気をつける必要があります。
具合的には、以下のような注意点が挙げられます。
- 調理する直前まで冷蔵庫で保管する(4度以下では菌は増えない)
- 調理道具はよく洗い、使用後は熱湯などで殺菌する
- 魚介類は真水でよく洗う
- できるだけ加熱して食べる
- 生食の場合は新鮮なものを、できるだけ早く食べる
また、傷口から菌が入り感染するケースもあります。これを「創傷感染」言います。海で怪我をした場合は真水でよく洗う、調理中も包丁や貝殻などで手を切らないようにする、などの注意が必要です。
まとめ
夏に多い腸炎ビブリオ食中毒。2〜3日で治ると言っても激しいお腹の痛みや下痢はできたら避けたいですし、まれにですが死亡例も報告されています。
腸炎ビブリオ菌は20度以上で急激に増加します。特に夏場は魚介類を常温で放置しないようにしましょう。調理の際も、菌を周りに広げないよう、細心の注意を払って行いたいものです。