難聴を引き起こす原因は、いくつかありますが、中耳炎でも難聴を起こすことがあります。中耳炎になるとどうして聞こえが悪くなるのか?治療法はあるのか?心配になりますね。ここでは、中耳炎で難聴になる原因や治療法についてまとめていきます。
中耳炎のタイプ
中耳炎は、耳の中耳の部分にウイルスや細菌が侵入することで、炎症が起き、膿や滲出液が溜まって、耳痛や発熱、耳が詰まったような感じを引き起こす病気です。中耳炎には、急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎があります。
急性中耳炎
ウイルスや細菌が中耳に浸入して引き起こされる急性期の中耳炎です。耳痛や発熱、耳の詰まったような感じ、軽い難聴になる場合もあります。成人の場合は、急性中耳炎になる確率は低いですが、内耳炎を併発することもあり、難聴が治りにくくなる場合もあります。
滲出性中耳炎
中耳内の粘膜から「滲出液(しんしゅつえき)」と呼ばれる液体が出て、中耳の空間に溜まる状態です。耳の痛みや発熱といった症状は見られませんが、難聴を起こすことが多いです。
慢性中耳炎
急性中耳炎や滲出性中耳炎が治らずに症状が慢性化してしまった状態です。難聴や耳だれなどの症状が見られます。
鼓膜に開いた穴が塞がらず、開いたままになり、また、中耳にある鼓膜から伝わった音の振動を「蝸牛(かぎゅう)」に伝える耳小骨が、炎症で動きが悪くなったり、溶けたりして、難聴を引き起こします。
鼓膜が中耳の壁にくっついてしまう癒着性中耳炎や鼓膜の表面などの細胞が増殖して塊をつくってしまう真珠腫性中耳炎などを引き起こす場合もあります。
原因は?
まずは、簡単に聞こえの仕組みをご説明します。耳は、外耳・中耳・内耳の3つの部分に分けられます。音は、空気の振動として、外耳道を通り、鼓膜から中耳腔に伝わり、内耳の蝸牛で電気信号に換えられて、神経を介して脳に音の信号が伝わります。
中耳炎で難聴となるのは、次のような症状があります。
- 膿や滲出液が中耳の空間内に溜まっている。
- 鼓膜に穴が開いている。
このような症状があると鼓膜が上手く振動できないため、鼓膜まで伝わった音が内耳に伝わりにくくなり、難聴が起こります。
治療法は?
中耳炎による難聴の治療法は、原因である中耳炎をしっかり治すことが重要です。中耳炎のタイプ別に治療法をまとめます。
急性中耳炎の場合
抗生物質による薬物療法や中耳の空間に膿が溜まって、痛みがひどい状態であれば、鼓膜切開を行い、鼓膜に開けた穴から膿を出します。
滲出性中耳炎の場合
滲出性中耳炎を起こす原因に、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、喘息など鼻やのどの病気があります。鼻やのどの病気がある場合は、それらの病気の治療を行います。
また、腫瘍やアデノイドなどが耳管の出口を塞いでいる場合は、手術で摘出します。滲出液が減らず、聴力の改善が見られない場合は、鼓膜切開や鼓膜にチューブを入れて、滲出液を排出します。耳管に空気を通す治療も行われます。
慢性中耳炎の場合
開いたままになっている鼓膜を塞ぐ鼓膜形成術や溶けた耳小骨を再建するなどの鼓室形成術が行われます。
まとめ
慢性中耳炎による難聴も初期であれば、中耳の障害による難聴であるため、手術により聴力が回復する場合が多いですが、放っておくと、内耳にも障害が及び、手術を行っても聴力が回復しないケースも出てきます。中耳炎の治療は、長期間を要するため根気が要りますが、急性期にしっかり治すことが重要です。