抗生物質にはセフェム系、ペニシリン系、ニューキノロン系とさまざまな種類がありますが、エリスロマイシンはマクロライド系に属する抗生物質です。
このマクロライド系抗生物質は細菌の50Sリボソームという部分に結合することにより、たんぱく質の合成を阻害することで増殖を抑える働きを示します。
効果について
ブドウ球菌や連鎖球菌をはじめとするグラム陽性菌や限定されてはいますが百日咳菌といった一部のグラム陰性菌にも抗菌作用を示します。
特にクラミジアやマイコプラズマといった通常の抗生物質ではあまり効かないとされている細菌に対して効果を発揮し、第一選択薬として使用されることがあります。
ただし、肺炎球菌に対する抗菌作用はペニシリン系やセフェム系に比べると弱い傾向にあります。
グラム陽性菌を中心とした細菌による扁桃炎や咽頭炎といった呼吸器感染症、膿痂疹などの皮膚感染症、中耳炎、副鼻腔炎などの耳鼻科感染症、百日咳など幅広い感染症に対して有効です。
副作用について
エリスロマイシンで懸念される副作用としては、下痢・吐き気・腹痛・嘔吐などの消化器症状です。
エリスロマイシンが胃で分解される際にヘミケタルという物質が生成されるのですが、これが消化管の蠕動運動を亢進することで消化器症状がよく出ます。
逆にこういった特徴を利用して、エリスロマイシンの静脈内投与により食道十二指腸カメラ検査の際に胃の内容物を排出させるために用いられることもあります。
また、アレルギー反応として、蕁麻疹やアナフィラキシーが起こることがあります。スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などもまれに見られるとされています。
長期投与での治療法
「瀰漫性汎細気管支炎(びまんせいはんさいきかんしえん)」に対して、エリスロマイシンを少量(エリスロマイシン1日400-800mg投与)、長期で投与する方法が用いられます。
長期というのは個人差がありますが、一般的には3か月、長い人では2年というケースもあります。
瀰漫性汎細気管支炎は、炎症が呼吸細気管支全層に広がり、呼吸細気管支のむくみなどにより気道が狭められ、呼吸困難、咳、痰などの症状が出る疾患です。
治療することが非常に難しい呼吸器疾患で、5年生存率は40%弱とも言われています。これはエリスロマイシンの気道の炎症を抑える効果が作用していると考えられています。
最近では、瀰漫性汎細気管支炎以外にも、慢性気管支炎、気管支拡張症などにもエリスロマイシンの少量かつ長期投与が行われています。
最後に
今回は、エリスロマイシンの効果や副作用、長期投与での治療法について解説してきました。聞きなれない薬かとは思いますが、この記事を通してエリスロマイシンに対する理解を深めていただければと思います。