タミフルと聞くと子供の異常行動や転落事故を思い浮かべる方も多いかもしれません。かく言う私も子供の頃、タミフルを服用して不思議な感覚に襲われたことがあります。今回は、タミフルの異常行動の原因・対処方法・事例についてまとめていきます。
原因
少し前の話になるかもしれませんが、「インフルエンザに感染し、タミフルを服用していたら、ベランダから転落した」というニュースが世間を騒がせていましたね。
ですので「異常行動はタミフルのせいだ」と思っている方も多いかと思います。ですが、実際のところはちょっと違うようです。
2007年と少し古いデータになりますが、こんな調査結果が報告されています。
厚生労働省の研究班が2007年に行った「インフルエンザに感染し、異常行動を起こした137名の患者がタミフルを服用していたかどうか」についての統計データになります。グラフの灰色部分は服用・非服用が不明な患者を指しています。
異常行動を起こした患者のうち、52名はタミフルを服用していないにも関わらず、異常行動を起こしています。
また、2012年の統計データではタミフル以外のインフルエンザ治療薬(リレンザ・イナビルなど)も合わせた統計データもあります。(こちらは厚生労働省の統計ではありません。)
2つの調査結果からも分かるように「異常行動の原因はタミフルだ」と断定することは難しく、「タミフルと異常行動の関連性は不明 (インフルエンザ自体が異常行動では…)」というのが、厚生労働省の見解のようです。
ですので、治療薬の服用・非服用に関わらず、インフルエンザに感染した場合は異常行動に注意する必要があります。
事例
ここでは、厚生労働省HP「インフルエンザQ&A」を参考に、インフルエンザ患者が起こす異常行動の事例をまとめていきます。
- 突然立ち上がって屋外に出ようとする
- 興奮して部屋を駆け回り、意味不明なことを口走る
- 興奮してベランダや窓から飛び降りようとする
- 屋外に出て歩き回るが、話しかけても無反応
- 誰かに襲われるような感覚を覚えて屋外に飛び出す
- 意味不明なことを口にし、泣きじゃくりながら歩き回る
- 急に笑い出し、階段を駆け上がろうとする
これらが代表的な異常行動になります。ベランダや窓から飛び降りたり、無意識で屋外を歩き回ったりすると命に関わることもあります。
対処方法
このようにタミフル服用後に異常行動が多々見られたので、平成19年に厚生労働省は「緊急安全性情報」を出しました。内容は下記の通りです。
[1] 10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
[2] 小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
このように異常行動を防ぐために「緊急安全性情報」が出されましたが、タミフルと異常行動の関連性が明確になったというわけではありません。実際のところは、的確な対処をとるのは難しいというのが現状です。
ですので、ここでは「子供を異常行動による事故から守るためにできること」を紹介しておきます。
- 発症後2日間は子供を1人きりにしない
- 子供を2階や高い所に行かせない
- ベランダや窓から転落させないように戸締りをしっかりする
- ぶつかったり、転んだりして危ないようなものは部屋に置かない
- 一人で家の外に出て行かないようにする
- 家に階段がある場合は登らせないようにする
お子様がインフルエンザに感染した場合やタミフルなどの治療薬を服用している場合は、以上の6つのポイントに注意するようにしてください。
特に「1. 発症後2日間は子供を1人きりにしない」を厳守することで、ほとんどの事故を防ぐことができるかと思います。
まとめ
今回は、タミフルの異常行動の原因・対処方法と事例についてまとめてきました。必ずしもタミフルが異常行動を引き起こしているのではないということを覚えておくようにしましょう。
ですので、「タミフルを服用していないから」と油断せずに、最低でも発症後2日間は側にいてあげるようにしてください。