糖尿病の治療は、まず、食事療法、運動療法が行われ、これらの治療で、血糖のコントロールが十分に行えない場合に経口血糖降下薬が追加されます。経口血糖降下薬には、さまざまな種類があります。今回は、スルホニル尿素薬(SU剤)とはどんなお薬なのかや効果・副作用についてご紹介します。
経口血糖降下薬とは
糖尿病は、簡単にいうと血糖値が高くなる病気です。
血糖値が高くなる原因としては、インスリン(血液中の糖を筋肉や細胞内に取り込む働きや糖からグリコーゲンや脂肪を生成するのを促す働きをするホルモン)の分泌が少なくなったり、分泌はあるものの働きが悪くなったりすることで起こります。
経口血糖降下薬は、このインスリンの分泌を促進したり、インスリンの働きを良くしたり(インスリン抵抗性の改善)、腸管からの糖の吸収を阻害することで、高血糖を改善します。
スルホニル尿素薬(SU剤)とは
スルホニル尿素薬は、経口の血糖降下薬として、最初に開発された薬です。SU剤は、サルファ剤という抗菌剤の副作用の研究から誕生しました。
サルファ剤という抗菌剤が、重篤な低血糖昏睡を起こすことから研究が進み、抗菌作用を持たず、血糖降下作用を持つSU剤が合成されたというわけです。
SU剤は、インスリンの分泌を促進して血糖値を下げるタイプの薬です。主な薬剤には、トリブタミドやグリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドなどがあります。
まず、インスリンが分泌される機序について触れたいと思います。すい臓のβ細胞からインスリンは分泌されますが、このβ細胞の膜には、GLUT2というグルコーストランスポーターがあり、細胞内へブドウ糖が取り込まれます。
取り込まれたブドウ糖は、細胞のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を作り出す解糖系、クエン酸回路と呼ばれる代謝経路によって、ATPを作ります。
細胞内のATPが増えると、ATP依存性カリウムチャネルと呼ばれるカリウムイオンを選択的に通すチャンネルがあり、このチャンネルが閉じます。すると、同様に膜に存在する電位依存性カルシウムチャネルが開いて、カルシウムイオンが細胞内に入ることで、細胞からインスリンが分泌されます。
SU剤は、β細胞内のSU受容体という受け皿とくっつくことで、カリウムチャネルを閉じます。カリウムチャネルが閉じることで、カルシウムチャネルが開き、インスリンの分泌を促します。
効果や副作用は?
それでは、効果や副作用について見ていきましょう。
効果は?
2型糖尿病では、インスリンの分泌量が減ってしまって、血糖のコントロールがうまくいかないタイプと、インスリンの分泌はあるけれど、正常に働かないため、血糖のコントロールがうまくいかないタイプがあります。
SU剤は、前者のインスリンの分泌量が減ってしまっているタイプに効果的です。SU剤は、持続的にインスリンの分泌を促しますので、血糖値を全体的に下げます。
副作用は?
続いて、副作用について見ていきましょう。
低血糖
注意が必要なのが低血糖です。常にインスリンの分泌を促している状態であるため、低血糖症状には注意が必要です。
低血糖症状とは、血糖が下がりすぎて、手足の震えや冷や汗、心臓がどきどきする、いらいらする、めまいがする、目がかすむなどが現れて、ひどくなると意識を失ってしまいます。
低血糖症状が現れたら、直ちに、砂糖10~20gまたは、糖分を含むジュースを200~350mLくらい服用しましょう。
もしも、アカルボースやボグリボースαグルコシダーゼ阻害薬を併用している場合は、薬の作用で、砂糖は単糖類へ分解できませんので、低血糖時には、必ず、ブドウ糖を服用しましょう。いつでも直ぐに対処できるように、ブドウ糖など糖分がとれるものを携帯しておくようにしましょう。
体重増加
SU剤を服用していると体重が増えることがあります。SU剤の効果で、インスリンの分泌が増えるため、血糖が低くなり、空腹感が強くなって、食べる量が増える傾向になりやすいことや、インスリンの働きで、糖が細胞内に取り込まれて、肝臓ではグリコーゲンとして、脂肪組織では脂肪として蓄えられるため、体重増加に繋がります。
体重増加で太ってしまうと、インスリンの働きが悪くなり、薬を服用している意味がなくなってしまいますので、薬物療法が開始となっても、食事療法・運動療法でしっかりコントロールしていくことが必要です。
まとめ
スルホニル尿素薬(SU剤)は、すい臓のβ細胞内のSU受容体と結合して、インスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる作用のある薬です。
服用中は、低血糖になりやすいため、十分に注意が必要です。また、体重増加をきたす場合がありますので、食事療法、運動療法でしっかりコントロールしていくことが大事です。