ドグマチールというお薬をご存じでしょうか。かつては胃腸薬として用いられていましたが、近年抗うつ効果が認められ、精神系の疾患の治癒のために用いられています。
あまり聞き覚えのない方もいらっしゃると思いますので、今回は、ドグマチールで離脱症状が出ることはあるのかなど、副作用や注意すべきことについてお話します。
ドグマチールとは
ドグマチールとは商品名で、またの名を「スルピリド」と言います。このお薬は、冒頭でもふれたように、当初は胃薬として用いられていました。
というのも、ドグマチールには、興奮を司る交感神経の働きを抑える作用があるため、服用すると体がリラックスします。リラックスすることで、胃粘膜への血流の増加や、胃粘膜の防御機能の向上、消化管の運動機能のアップなどがみられるからです。
ドグマチールは比較的穏やかに効くため、胃薬としても重篤な胃潰瘍などに処方されることはありませんでした。
そんなドグマチールが精神薬として用いられるようになったのは、興奮やイライラなどと関連する脳内物質ドーパミンを抑える働きがあることがわかったからです。
一見すると、ドーパミンが必要なうつ症状に、ドーパミン抑制成分を投与するという矛盾に見えますが、一説では次のように考えられているそうです。
少量のドグマチールを投与することは、ドーパミンを分泌している神経である、ドーパミン受容体に、ドーパミンがあまり分泌されていないことを感知させ、過剰に出そうと働くためではないかという説です。
このようにうつ状態にあっても、自らドーパミンを分泌することができ、気分が落ち着き、こころのバランスが良くリラックスできるようになるメカニズムです。
離脱症状が出ることも?
精神薬で不安に感じられること。それは離脱症状ではないでしょうか?一般的にこの呼び方で知られていますが、医学的には「中断症候群」と呼ばれます。
症状としては、自己判断などで服薬をやめてしまうことで、セロトニンなどの血中濃度が急低下し、身体がそれに対応できないことによって、めまいやしびれ、頭痛などを引き起こしてしまいます。
では、ドグマチールをやめた場合はどうなのでしょうか?比較的穏やかに効くと言われているドグマチールは、離脱症状が起こりにくいとされています。
ほとんどドグマチールによる離脱症状は報告されていませんが、あるとしたら、先にも挙げたような自己判断での休薬です。したがって、やめたいと思った時には、きちんと主治医と相談のうえ判断をあおいでください。
注意すべきことは?
次に、ドグマチールを服用するうえでの注意点を挙げます、比較的に優しく効くお薬ですが、注意すべき点が2つあります。
高プロラクチン血症
乳汁を分泌するホルモンを増やしてしまい、男性でも女性でも乳汁が出てきてしまうことがあります。また、男性ではホルモンバランスの崩れから性欲低下、女性では乳がんのリスクが高まるなどの危険性があります。
錐体外路症状(EPS)
ドーパミンが減ることで、パーキンソン病のような症状が出てしまうことです。具体的な症状としては、動きが緩慢になったり、手が震えたりといった症状が見られます。
まとめ
元々胃腸薬として用いられてきたドグマチール。今では抗うつ薬として苦しむ人の治療に使われています。薬のリスクを十分知ったうえで、医師の判断に基づいた使用量を守って、服用してくださいね。