心筋梗塞という言葉はよく耳にしますが、「陳旧心筋梗塞(ちんきゅうせいかへきしんきんこうそく)」とはどういった状態なのでしょうか?ここでは、陳旧心筋梗塞の原因・症状・治療法などについてまとめていきたいと思います。
陳旧性心筋梗塞とは
陳旧性心筋梗塞とは、発症から30日以上が経過した心筋梗塞のことです。壊死した心筋は線継化しており、症状も安定しています。
しかし、残った心筋への負担が高まるため、心肥大をきたしやすく、慢性心不全の原因となりうります。ちなみに発症から2週間以内の心筋梗塞は急性心筋梗塞と呼ばれています。
原因一覧
心筋梗塞などの虚血性心疾患は、心臓を養う冠動脈の動脈硬化により血管の内腔が狭くなり、血管の流れが制限されて生じます。
心筋梗塞は発症からの時間の経過で治療法、重症度も異なるので、発症2週間以内を急性心筋梗塞と言い、1ヶ月以上経過したものを陳旧性心筋梗塞としています。
同じく冠上動脈の動脈硬化に基づく狭心症は心筋の壊死がなく、心臓本来の働きであるポンプ機能は正常に保たれているのに対し、心筋梗塞では心筋が壊死に陥っています。
ですので、ポンプ機能が障害され、壊死が広汎におよべば、心不全やショックを合併することもあります。「粥腫(じゅくしゅ)」は、動脈硬化により形成されます。
粥腫とは
コレステロールエステルを中心とした資質成分、線維などの細胞外マトリックス、平滑筋細胞やマクロファージーなどの細胞成分から成ります。
動脈硬化は、動脈が弾力性を失ってもろくなった状態で年齢と共に徐々に進行します。
冠動脈の動脈硬化を進行させる因子を冠危険因子といい、高コレステロール血症・高血圧・喫煙・糖尿病・肥満・痛風・中性脂肪・運動不足などがあげられます。
症状一覧
主な症状は、「胸部の激痛」、「絞扼感(しめつけられるような感覚)」、「圧迫感」などです。胸痛は30分以上続き冷や汗を伴う事が多く、下顎・頸部・左上腕・心窩部に放散して現れることもあります。
随伴症状として呼吸困難・意識障害・吐き気・冷や汗を伴う時は重症のことが多いです。高齢者は、特徴的な胸痛ではなく、息切れ・吐き気などの消化器症状で発症する事も少なくありません。糖尿病の患者さんや高齢者では、無痛症のこともあります。
狭心症の患者さんで、症状の程度がいつもより強くなったり、回数が頻繁になったり、軽い労作で誘発されるようになった場合、不安定狭心症や心筋梗塞に移行する可能性があります。
治療法(薬)一覧
できるだけすみやかに、「詰まった冠動脈を再開通させる治療(再灌流療法)」を行うことが重要です。再灌流療法は、主に2つの方法で行われます。
血栓溶解療法とは、静脈ないし冠動脈から血栓を溶解させる細胞プラスミノーゲンアクチベーターという薬を投与する方法です。
また、冠動脈インターベンションは、カテーテル検査に引き続いてバルーンによる拡張術やステトンを留置する方法です。日本ではインターベンション治療が一般的です。
一般的治療としては、数日間の安静・絶食、鎮痛剤・安定剤の投与・酸素吸入です。抗血栓薬としてアスピリンは急性期から投与し、継続的に心電図を監視して、重症の心室性不整脈の出現に対応できるようにします。
心筋梗塞後は、生命予後の改善効果が示されているACE阻害薬・アンジオテンシン受容体阻害薬を投与します。さらに、β遮断薬も死亡率を減少させることが明らかにされています。
陳旧性心筋梗塞の重症度は、「心機能(心筋壊死の大きさ)」と「罹患枝数(狭窄の病変がある冠動脈の数)」で規定されます。
ですが、この段階になると心筋の保護と動脈硬化の進展を抑えて、次の心筋梗塞の発症を防止することが重要です。
動物性脂肪を控える・禁煙・運動などの生活習慣の改善も治療法のひとつです。重要な病気ですので、強い胸痛があれば、担当医師に診てもらいましょう。
まとめ
今回は、陳旧心筋梗塞の原因や症状、治療法について見てきました。あまり聞きなれない病名かもしれませんが、発症すると危険な病気でもあります。ですので、前もって知識をもち、しっかりと予防できるようにしましょう。