心筋梗塞の心電図波形は時間と共に変化していきます。心電図を見ればどれくらい時間が経っているのかが分かるため、とても重要です。今回は、そんな心筋梗塞の心電図の波形や変化の見方について解説していきたいと思います。
心筋梗塞の心電図変化
発症極早期
発症極早期とは、「発症後数分の極めて早い段階」のことを言います。この時、心電図異常Q波やSTの上昇は明らかではありません。わずかにT波の増高が見られます。(グラフにはありません。)
急性期
急性期とは、「発症直後から数時間以内」のことを言います。
STの上昇が見られます。正常な時に比べると、波の打ち方が変形しています。場合によってはST波が上昇しない事があり、「生化学検査(心筋障害マーカー)」など他の検査結果で判断します。
次に発症から数時間後の心電図ですが、急性期同様にSTが上昇したままですが、その部分に一致して新たに異常Q波が出現します。(異常Q波は発症直後にはっきり見られないこともあります。)
その後、半日から数日にかけて、T波陰性化(冠性T波)が出現します。
回復期
回復期とは「発症後、数日から1週間後」のことを言います。
異常Q波は変わらず見られますが、STの上昇が徐々に消失していきます。冠性T波も一時的に深くなりますが、徐々に消失していきます。
慢性期
慢性期とは、「発症後、1週間から1ヶ月以降」のことを言います。
STの上昇はほぼ見られなくなります。冠性T波は一時的に深くなりますが、多くの場合消失していきます。異常Q波は持続して現れます。異常Q波のみ残ります。
変化の見方
異常Q波やSTの上昇が認められる位置を調べることにより、心筋梗塞や閉塞血管を診断できます。それぞれの値の意味を見ていきましょう。
異常Q波
心筋壊死の状態を表します。心筋は壊死すると再生することがない為、持続して心電図に現れます。心内膜下梗塞の場合は異常Q波が現れないことがあります。
STの上昇
心筋に血液を供給している血管が完全に閉塞している状態で、高度の障害の存在を意味しています。強い胸痛がある場合は急性心筋梗塞の疑いがあります。
冠性T波
心筋梗塞に認められる左右対称の陰性T波のことです。心筋虚血の存在を表します。普段は上向きに現れますが、異常があると、さらに尖って高くなったり (尖鋭化)、下向きや平坦になります。
下向きや平坦の時は心筋虚血の事があります。心電図は様々な方向から観察できることができます。心筋梗塞の部分は閉塞する冠動脈によって違います。
12誘導
12誘導から心筋梗塞の場所が分かります。(◯は「異常Q波」を、◎は「R波の増高」を示しています。)
最後に
心電図は同じ疾患、病状でも同じものが見られる訳ではありません。一人一人の心電図は違いがあります。一般的な内容をまとめましたが、書いてあることが全てではないことを理解しましょう。