全身麻酔の合併症である悪性高熱症という病気を知っていますか?
悪性高熱症は麻酔薬を投与される事がきっかけで発症する病気で、一度発症すると短時間のうちに急激に全身状態が悪化し、死亡率も高い恐ろしい合併症で「麻酔科の悪夢」と言われています。
今日では早期の診断と早期治療により致命率が低下している希な病気ですが、予備知識としてその原因や症状を見ていきましょう。
原因
全身麻酔の副作用や合併症として手術中、または手術後に発症しますが、1万人~2万人に1人という大変希なケースです。麻酔薬が要因として発症するのは特定の麻酔薬や吸入薬物などが考えられています。
また、遺伝性による原因の方が可能性として高いことが近年注目されていて使用される麻酔薬や筋弛緩薬によって細胞内のカルシウム調節に関する遺伝子の異常が誘発されて起こると考えられています。
そのため、全身麻酔を使用した手術などの治療が必要な場合は、患者の血縁者に全身麻酔による副反応症状があった人はいないか、という確認を必ず行うようになっています。
この確認作業は発症の確率などを把握する上で重要な意味を持ちますので、もし全身麻酔による手術などを行う予定のある方は身内や血縁者に確認をしておくと安心です。
症状
悪性高熱症の主な症状は骨格筋内のカルシウム濃度が高くなり、筋肉の硬直や原因不明の不整脈、頻脈が出現し血圧が不安定になり、重篤な呼吸異常が現れます。
その後、急激な体温の上昇があり筋肉が崩壊され極めて危険な状態に陥ります。この病気は進行が大変速いため、分刻を争う速やかな検査と処置が必要です。
治療法(薬)
悪性高熱症の発症が疑われた場合は体温の上昇を抑えるために直ぐに体全体の冷却を行います。そして、誘因となっている薬物の投与を中止して唯一の特効薬である「ダントロレンナトリウム」の点滴投与を行います。
ダントロレンは筋弛緩剤であり、骨格筋細胞のリアノジン受容体に直接働き、悪性高熱症が発症した時に起こるカルシウムの放出の暴走を阻害する働きがあります。
このダントロレンナトリウムの開発と対処方法の確率により死亡率が低下しています。
まとめ
突然発症し、死亡率も高い恐ろしい病気の悪性高熱症ですが、予防の手段もあります。
前述のように予め全身麻酔を使う事がわかっている状況であれば特定の遺伝子因子を持つ潜在患者であるかどうかという事を確認しておくことが最大の予防法と言えるでしょう。
また、素因有りと確認出来ている場合には「悪性高熱症友の会」の会員証やペンダントヘッドを携帯し万が一に備え、大きな怪我や自己に気をつけるという事も重要な事です。