腎不全と聞くとなんとなく命に関わる重い病気とイメージされる方も少ないと思います。腎臓が正常に動かないとすると、おしっこが出なくなって、人工透析をしなければならなくなる。透析も、一度始めたら、一生し続けなければ生きていけないといった不安も持たれる方も多いことでしょう。
腎不全と一言で言っても、急性腎不全、慢性腎不全とに種類が分けられます。急性腎不全の中でも、腎前性、腎性、腎後性に分けられます。今回は、その中の一つ、腎前性急性腎不全について、原因や症状、治療法について取り上げてみたいと思います。
原因は?
腎前性急性腎不全は、簡単に言うと腎臓に入る前の部分に異常が生じること、つまり、腎臓を流れる血液が極端に減少して、急性腎不全を引き起こすことをいいます。
主に脱水症やショック、熱傷、大量出血、うっ血性心不全、肝硬変、腎動脈狭窄症などにより、腎臓に流れてくる血液量が著しく減少し、尿を作ることができなくなります。ここでいうショックとは、精神的なショックではなく、出血などにより循環血液量が減少し、血圧が急激に下がる状態をいいます。
分かりやすいように例えをあげてみるとすると、雨が降らないことにより、ダムの水が減少し、水不足となって私たちの家の水道から水が出なくなるようなものです。つまり、腎臓は血液をろ過する場所ですが、そもそも腎臓に入ってくる血液が少なくなってしまうので、必然的に尿も出なくなるという訳です。
症状は?
- 乏尿:尿の出が悪くなります。
- 無尿:尿が全く出なくなります。
急性腎不全がよくならなままでいると、次第に老廃物が体の中にため込まれ、疲労感や食欲低下、悪心などがあらわれる場合もあります。
治療法は?
循環血液量を増やすために点滴を行い、腎臓に十分な血液が流れるようにします。大量出血には輸血を行う場合もあります。血圧をあげて、腎臓に十分な血液が流れるように治療すれば、急性腎不全も治ります。また、原因疾患の治療も行います。さらに、腎機能障害が高度の場合には、「血液浄化療法(透析)」をおこないます。
まとめ
腎前性急性腎不全とは、腎臓に流れてくる血液量が何らかの原因で著しく減少することで起こります。そのため、尿量が減少したり、尿が全く出なくなることがあります。
まずは、その原因疾患に対して適切な治療をし、点滴によって循環血液量を増やすことで腎臓に十分な血液が流れるよう治療することで急性腎不全を治すことができます。
腎不全とひとことで言っても、原因や種類によっても治療法が変わってきます。まずは、それを十分に理解したうえで対応することが大切になります。