子供が訴える、痒みある湿疹は多岐の上ります。具体的に子供の湿疹には、どのようなものがあるのかをご紹介したいと思います。ですが、最終的には皮膚科に行くのが最も安全かつ確実な方法ですので、それを念頭にお読みくださればと思います。
目次
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す痒みのある湿疹を主病変とする疾患です。
患者の多くはアトピー素因(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎などを生じやすい体質)を持っているため発症します。
症状としては、
- 紅斑 (赤くなること)
- 丘疹 (小さな盛り上がり)
- 小水疱 (小さな水膨れ)
- 膿疱 (うみの袋)
- 糜爛 (皮膚表面が削れていること)
- 痂疲 (かさぶたのこと)
- 鱗屑 (ふけのようなもの)
- 苔癬化 (繰り返し掻く事によって皮膚が厚くなること)
- 色素沈着 (肌が黒褐色になること)
などが複雑に絡み合います。
治療法
治療法は以下の3点です。
- アレルギー反応を起こし、かゆみや炎症などをもたらすきっかけであるアレルゲンの除去と紫外線や細菌や化学物質などの皮膚を刺激する悪化因子を突き止め、除去します。
- 皮膚の炎症を抑える為に塗り薬を使います。ステロイドの外用薬が効果的ですが、症状や部位に応じて作用の強いもの、弱いものを使い分けていきます。ステロイドで副作用が出そうな場合にはタクロリムス外用薬が用いられます。
- 皮膚のバリア機能が低下し、乾燥しているため、入浴や汗を書いた後はシャワーを浴びて清潔にし、保湿剤を塗りましょう。
アトピー性皮膚炎の種類
アトピー性皮膚炎には、以下の種類があります。
鳥肌
冬に特に目立つ症状で、単純に鱗屑(白くて薄いかさぶたのようなもの)が目立っている状態、あるいは乾燥した毛穴が盛り上がり、ザラザラした感じのある皮膚を言います。
瀰慢性湿潤紅斑
首や腕のしわの広い範囲で皮膚が赤く湿ってくる状態です。「間擦疹」とも言われ、太っているために皮膚と皮膚が触れ合い、常に湿った状態になるために生じます。
貨幣状湿疹
頂上の中央に水疱をもった、直径5mm・高さ2mmくらいの小さな盛り上がりが狭い範囲に多数発生し、押し合うように集まり、一円玉から五百円玉くらいの大きさになる状態です。
リング状紅斑(白癬様)
文字通りリングができ、中央が普通の皮膚の高さで、色は真っ赤なことは少なく、薄赤から淡褐色まで様々な色に変わります。
リングの縁は、高くはないものの隆起しており、リングの上に2mm程度の小さな盛り上がりと透明な分泌液とかさぶたが点在します。
主に体幹に、時に顔面や四肢にも発生します。痒みはない事が多いのですが、時々痒みを伴います。
痒疹
2-5mm程度の大きさで、少し褐色の硬い隆起物ができる状態です。中央部に掻き毟ることによる、ただれやかさぶたが存在します。しばしば掻き毟るため、中央部は白色となっている場合もあります。
局面型湿疹
貨幣状湿疹と痒疹の中間くらいの隆起性湿疹です。楕円形をしている事が多く、円形の場合もあります。周辺皮膚から切り取ったように明瞭に隆起し、むくんで腫れた状態となります。
耳切れ
耳たぶん付け根が痒くなり、耳たぶを爪で削り落としそうな勢いで掻く症状です。何故ここが痒くなるかなどはわかっていません。
尋常性魚鱗癬
膝から足首までの外側に、テカテカした光沢のある鱗が付いたような皮膚になる状態を言います。冬の乾燥期に多く目立ちます。
最近、これがアトピー性皮膚炎患者の何人かがフィラグリン遺伝子の異常を持っているために起こっていることがわかってきました。
脂漏性皮膚炎
乳児の顔面・頭部の毛穴ごとに赤色の盛り上がりができ、頂上に黄色い小さなかさぶたができる疾患です。症状が強くなると、盛り上がりが融合して赤くなり、大きなかさぶたになる事もあります。
頭皮で大きなフケが帽子のようになったものを「cradle cap (ゆりかご帽子)」と言います。顔面では、いわゆるTゾーンといわれる眉間、小鼻、鼻と唇の溝などの箇所が、淡黄色のフケを伴って赤くなってきます。
治療法としては、優しく水荒らしするだけで大丈夫です。ゆりかご帽子はオリーブオイルなどで軟らかくして自然に落ちるのを待ちましょう。無理にかさぶたを取り去らないようにしてください。
新生児挫創
額・顎の毛穴ごとに赤色から黄色の盛り上がりが生じます。頂上にフケやかさぶたはなく、ニキビや膿を伴う事があります。
原因は男性ホルモンの働きが強くなるためです。こちらも治療は、優しく水荒らしするだけで大丈夫です。
汗疹 (あせも)
汗疹には2つのタイプがあります。
小水疱
薄い各層化の2mmまでの小水疱が出来る症状です。赤みは無く、水玉や泡のように見えます。治療法としては、放置したままで、入浴時に普通に体を洗えば消えていきます。
大水疱
汗の管に炎症が生じて、汗腺の部分に5mmまでの赤い盛り上がりが出来る症状です。原因は、汗の管が何らかの要因で詰まり、炎症が起こるためです。
治療法としては、皮膚をこすらない程度に、汗をよく拭き取るようにするとよいでしょう。痒みが強い時は、止痒剤の内服程度でいいのですが、細菌感染を起こした場合には、抗生物質の服用が必要です。
外用抗生剤の効果は少ないようですが、塗って悪いわけではありません。ただし、ステロイド入りの抗生剤軟膏は使用しないようにしましょう。
伝染性軟属腫 (水イボ)
水イボウイルスに感染する事で、身体の何処にでも発生する病気です。直径2mmまでの小さいものでは、単なる盛り上がりで、中央に直径3分の一程度の白色の内容物が見えます。
直径5mm前後までの大きなものでは、盛り上がりの根元にくびれが出来ている場合が多く見られます。
やはり中央部に白色の内容物が見えますが、古くなると見えなくなっている事もあります。自覚症状はありませんが、時に痒がることもあります。
治療法としては、先端のとがっていないピンセットで中央のみつまんで取ります。ある程度の期間、体に付いていると免疫が出来て自然に取れる事がありますので、自然治癒を期待しても良いでしょう。
伝染性膿痂疹 (とびひ)
強い痒みのある水疱または膿疱ができます。それが破れるとジクジクした状態となり、やがてかさぶた状態となります。
虫刺されのような湿疹ができたところを引っ掻いたり、擦ったりすることで細菌に感染し発症します。接触感染で大人であっても発症する可能性があります。タオルなどは別にするようにしましょう。
治療の際には、抗生剤の内服と外用が必要です。外用薬は、抗生物質だけ入った軟膏で十分です。ステロイド含有の物は使用しないようにしましょう。
蕁麻疹
24時間以内に、多くは2時間以内に跡形なく消失します。強い痒みがあります。出来始めに急激に隆起が起こると、痛みとして感じる事があります。
色々な原因で起こり、急性でも慢性でも、アレルギー現象による蕁麻疹の発症は少ないです。治療時には、外用剤は効果がないので、抗ヒスタミン剤の内服が必要です。
接触皮膚炎 (かぶれ)
何かが接触した所に接所した形に一致して赤い色とブツブツができる、非常に痒い症状です。治療で、最初にしなければならないのは、石鹸で接触物を洗い落とす事です。
その上で、アトピー体質がなければ、ステロイド外用剤でまず治療し、炎症が酷い場合は短期間のステロイド内服も行います。かゆみ止めの内服もある程度有効です。
皮膚カンジダ症
カンジダ菌というカビによって起こる病気です。境界明瞭な湿った赤い部分が、首、肛門周囲、下腹部、わきの下など、湿った部分にできます。周囲に小さな赤い斑点や膿を内包した水疱を伴う場合があります。
治療法は、石鹸により洗浄と抗菌剤の外用薬です。寒い季節でなければ、乾燥状態にした方が早く治ります。
乳児湿疹 (2ヶ月-1歳未満の場合)
顔面、体幹上部、頭部が赤くなったりただれたりします。掻き毟ることにより更に酷くなり、ジクジクしたかさぶたができたりします。
かさぶたが取れると下に良い皮膚が出来てくるんですが、この時に非常に痒くなってかさぶたを掻き取ります。
栄養状態さえ良ければ皮膚は自然に良くなっていきます。母乳栄養中であれば、お母さんがしっかり栄養のある食事をすることが重要です。
ミルク栄養の場合は、ミルクを少し濃い目にすることや、離乳食を早めることも必要でしょう。
小児湿疹 (1歳末頃-10歳頃の場合)
この時期以降の大きな特徴は、個々の小さな湿った皮膚疾患はありますが、どちらかといと乾燥傾向の皮膚疾患が多い事です。
日常生活では、はいはいから二足歩行に移っていきますので、運動によってよく擦れる肘、膝、四肢の皮膚が伸びる側に小さなブツブツがよく出ます。
4-5頃から徐々に、伸びる側の疾患が減り、肘、膝裏などのただれが目立ってきます。
汗をこまめに、ガーゼやタオルなどで拭き取ってあげましょう。石鹸で洗ったあとは、低刺激のベビー用ローションやクリームで保湿するよう心掛けると良いでしょう。
まとめ
今回は、お子様に湿疹が出た時に考うる病名を紹介してきました。他にも、様々な病気が考えられます。心配な場合は医師の指導を受けるようにしてください。