咽頭炎には、ウィルスや細菌によるものだけでなく、空気の乾燥、大声の出し過ぎ、たばこやアルコール、あるいは刺激性ガスやほこり、花粉など、物理的・化学的な原因によるものがあります。ここでは、咽頭炎に効く抗生物質についてまとめます。
抗生物質について
抗生物質(抗菌剤)はウィルスには効きません。近年は、抗生物質に耐性を持つ菌(耐性菌)が生み出される問題があるため、乱用しないよう気をつけねばなりません。
また、抗生物質には、下痢や吐き気、発疹など、数々の副作用があるので、慎重に使用する必要があります。
抗生物質を使用する場合も、原因となった細菌をできるだけ特定し、効果的な薬剤を処方することが望まれます。
処方には、内服と注射があります。細菌性の咽頭炎に効果があるとされる代表的な抗菌剤(カッコ内は商品名)は以下の通りです。
βラクタム系
ペニシリン系
「グラム陽性菌(溶連菌、ブドウ球菌、肺炎球菌、化膿連鎖球菌など)」に作用します。一部の「グラム陰性菌(インフルエンザ菌…ウィルスとは別物)」にも効果があります。同じグラム陰性菌でも、緑膿菌には効きません。
代表的なものには、アモキキシリン(サワリシン、ワイドシン、パセトシン)、アンピシリン(ビクシリン)、スルタミシリントシル(ユナシン)などがあります。
セフェム系
第一世代〜第五世代まであるが、古い世代はグラム陽性菌への作用が強く、逆に、新しい世代はグラム陰性菌への作用が強いです。第一世代にはセファゾリン(セファメジン)などがあります。
第三世代には、緑膿菌に効かないセイポドキシム(バナン)などと、緑膿菌に効くセフタジジム(モダシン)、セフォペラゾン・スルバクタム(スルペラゾン)などがあります。
セフジトレン(メイアクト)はグラム陽性菌だけでなく、ペニシリン耐性肺炎球菌に効くとされています。
だが、内服のセフカペン(フロモックス)やメイアクトは、耐性菌を生みやすく、小児では低血糖症・痙攣・脳症などの重篤な副作用が報告されています。
セフェピム(マキシピーム)など第四世代は、第一世代と第三世代の効果を併せ持っており、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に作用し、緑膿菌にも効果があります。
カルバペネム系
あらゆる細菌に効果があり、乱用されがちな抗菌剤でもあります。
例外的に効かないのが、レジオネラ菌、マイコプラズマ、クラミジアなど細胞壁がない細胞内寄生菌や、カンジタ真菌、表皮ブドウ球菌などであります。
代表的なものにイミペネム(チエナム)、メロペネム(メロペン)、ドリペネム(フィニバックス)などがあります。
ニューキロノン系
吸収率が高く、作用する菌の範囲も広いため、多用されています。特に、グラム陰性菌(緑膿菌、アシネトバクター)など、βラクタム系が効かない菌や、βラクタム系が使えない人で用いられるます。
鉄やマグネシウム、カルシウムなどと結合し、吸収を妨げる(キレート形成)ので注意が必要です。
代表的なものにシプロフロキサシン(シプロキサン)やモキシフロキサシン(アベロックス、ベガモックス)などです。
また、後発のレボフロキサシン(クラビット)やシタフロキサシン(グレースビット)は肺炎球菌にも作用しますが、値段が高くなっています。
アミノグリコシド系
グラム陰性桿菌(緑膿菌、サルモネラ菌、レジオネラ菌、髄膜炎菌、カタラリス菌)などに効果を発揮する。グラム陽性菌への作用は弱く、βラクタム系と併用することが多い。
代表的なものにゲンタマイシン(ゲンタシン)、トブラマイシン(トブラシン)、アルベカシン(ハベカシン)、アミカシン(アミカシン)などがあります。
また、アルベカシン(ハベカシン)は、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌に効果を発揮します。
マクロライド系
作用する菌の範囲が広く、副作用が少ないため、多用されているが、耐性菌が増えています。抗痙攣剤や抗凝固剤(ワーファリン)、免疫抑制剤などと飲みあわせに注意が必要です。
代表的なものにクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アジスロマイシン(ジスロマック)などがあります。
まとめ
今回は、咽頭炎に効く抗生物質についてまとめてきました。抗生物質の使い過ぎは耐性菌を生み出す危険性があるので注意が必要です。