悪性リンパ腫の検査では、血液や骨髄が調べられます。ですが、検査結果を一目見ただけでは、どの項目が何を指していて、どんな意味を持っているかは分からないかと思います。そこで、今回は、悪性リンパ腫の血液検査の項目を一覧にしてまとめていきます。
目次
項目一覧
まずは、悪性リンパ腫の血液検査の項目と、それぞれの基準値を見ていきましょう。
白血球 (WBC)
- 血液に侵入した細菌や異物を殺菌・除去してくれます。
- 基準値は、4,500-9,000/μL です。
赤血球 (RBC)
- 酸素の運搬に関わります。
- 基準値は、男性で 410万-530万/μL 、女性で 380万-480万/μL です。
ヘモグロビン (Hgb)
- 赤血球の中に含まれるタンパク質で、酸素の運搬に関わります。
- 基準値は、男性で 14-18 g/dL 、女性で 12-16 g/dL です。
ヘマトクリット値 (Hct)
- 血液中の血球の体積を示す数値です。
- 基準値は、男性で 40-50% 、女性で 35-45% です。
血小板 (Plt)
- 血管壁が損傷した時に修復する役目があります。
- 基準値は、15-40万/μL です。
好中球
- 白血球の1種です。
- 基準値は、20-75% です。
好塩基球
- 白血球の1種です。
- 基準値は、0-5% です。
好酸球
- 白血球の1種です。
- 基準値は、0-15% です。
単球
- 白血球の1種です。
- 基準値は、0-15% です。
リンパ球
- 白血球の1種です。
- 基準値は、20-65% です。
可溶性インターロイキン2受容体 (sIL-2R)
- 特定の細胞や単球、マクロファージなどを分化・増殖させます。
- 基準値は、122~496 U/mL です。
乳酸脱水素酵素 (LDH)
- 植物・動物を含め多くの生物が保有する酵素の1種です。
- 基準値は、200-400 IU/L です。
チミジンキナーゼ活性 (TK)
- 細胞の再生や胎生期発生、ウイルス感染細胞などで値が上昇します。
- 基準値は、5U/L 以下です。
注意すべき項目
上記の13の項目中から、悪性リンパ腫で注意すべき項目にスポットライトを当てていきたいと思います。
小難しい話も出てきますので、よく分からない時には、こんな感じかとお読みいただければと思います。
sIL-2R値
α鎖 (CD25;分子量55kd)、β鎖 (分子量70kd)、γ鎖 (分子量64kd)の3種類があります。α鎖は膜貫通型糖タンパク質です。活性化T細胞、活性化B細胞に発現します。
限定分解により産生される可溶型α鎖は、T細胞系の活性化に伴って増加するため、T細胞の活性化の消長を示す指標となります。
悪性リンパ腫をはじめ、白血病・関節リウマチ・膠原病などの免疫系のさまざまな病的状態で上昇しており、病勢を反映する指標として有用だと考えられています。
T細胞について
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種です。身体を異物から守る機構 (免疫応答)の司令塔ともいうべき大切な細胞集団です。
B細胞について
免疫応答に関与するリンパ球で抗原の刺激に応答して抗体産生を行います。
LDH値
乳酸の脱水素反応で、ピルビン酸を生じる酵素です。骨格筋で作られるM型と心筋で作られるH型、2つの型が存在します。全身の組織細胞のほとんどに存在しますが、肝臓・腎臓・肺・血液・筋肉・がん細胞内に多く見られます。
LDH活性は心臓・腎臓・骨格筋・膵臓・脾臓・肝臓・赤血球などの悪性腫瘍組織に高く、 組織の細胞が壊れると、血液中に流れ出て値が上昇します。これらの臓器に病変が起こった時に血中に遊離するので、診断に有用だとされています。
TK値
チミジンキナーゼはDNA合成のサルベージ経路で働く酵素です。がん細胞は活発に細胞分裂を繰り返しているため、チミジンキナーゼ活性が高い値を示します。
最後に
今回は、悪性リンパ腫の血液検査で診る項目について見てきました。後半は少し専門的な話が入ってきたので、分かりにくいかとは思いますが、前半で紹介した項目の中で、sIL-2R値・LDH値・TK値に注目するようにしてください。