腎不全を患っている患者数は平成26年の調査において、29万6,000人ともはや国民病とも呼べるポピュラーな病気です。腎不全には急性腎不全と慢性腎不全の2種類があり、どちらも長期を見越した食事療法をはじめとする治療が欠かせません。そこで、今回は、末期腎不全とはどのような状態かや症状、食事療法における注意点などを見ていきたいと思います。
末期腎不全とは
冒頭で腎不全には急性のものと慢性のものがあるとふれました。どちらも腎臓の機能が低下し、体に不調をきたす状態ですが、急性は名前のとおり急激に腎臓の働きが弱まることで、早期に適切な治療を行うことで、腎機能の回復が見込めます。
一方、慢性の方はじわじわと腎臓の機能が悪くなってしまうため、ステージに合わせた治療が行われますが、腎臓の機能回復は見込めず、対症療法か根治療法といった選択肢がとられます。
腎臓は腰のあたりに位置する、こぶしほどの大きさの臓器です。食事によって摂取した水分やエネルギーを老廃物として排出する働きがあります。
また、排せつにともない血液をきれいにするという働きがあります。腎不全になると、この老廃物の排出や血液の浄化作用が弱まってしまうため、腎臓に負担をかけない食事療法がとられます。
また、慢性腎不全に陥り、病状が末期に達すると、完全に腎臓が機能しなくなってしまうため、人工透析や腹膜透析を行い、定期的に血液から老廃物を除去することが必要になります。
症状は?
では、腎不全の症状をみていきましょう。腎臓の機能低下にともない、老廃物や水分が体内にたまりやすくなるため、初期の症状としては、尿の出が悪くなってしまったり、まったく出ないという症状がみられます。
しかし、この病状がさらに進行すると、夜間の尿が増える、目や足のむくみ、疲れがとれない、食欲不振、かゆみ、息切れなどがみられます。
早期の段階では気づかないことも少なくありません。そのため生活習慣の改善などを行わずに病気が進行してしまうということがあります。
したがって、定期的に尿検査、血液検査を行い、早期に発見して対策をとることが大切です。次に、腎不全と判明してから継続して行われる治療である、食事療法について注意点と共にご説明します。
食事での注意点は?
腎不全になると、老廃物がたまりやすく腎臓に負担をかけてしまうたんぱく質やリン、カリウム、塩分などさまざまな栄養素の摂取制限が必要です。これは病状の早期から末期に至るまで一貫して取り組む必要がある重要な治療の1つです。たんぱく質は大量の老廃物をうみだすため、標準体重あたり1日0.6~0.7gの摂取が推奨されています。
また、腎機能の低下にともない、塩分の排出がうまくいかなくなるため、とりすぎによってむくみや高血圧を引き起こしますので、塩分摂取量にも注意が必要です。とくに練り物やしょうゆを使用したものには塩分が多く含まれていますので、控えたり減塩商品を選ぶことが大切です。
そして、末期の腎不全になるとさらに食事には注意が必要になります。腎臓の機能がまったく働かなくなるため、透析までの期間、老廃物の排出がまったくできません。なので、栄養素の制限に加え、水分摂取の管理も必要になってきます。
透析中の食事の注意点として「水分の摂取量」や「カリウム・リンの制限」、「塩分・たんぱく質の制限」が挙げられます。透析までの間排尿が行えませんが、透析によってたくさんの水分を取り除くため、血圧の不安定化や心不全、高血圧、肺気腫などになりやすいといえます。
また、末期の腎不全ではカリウムの排出ができなくなってしまうため、心不全や不整脈を引き起こしてしまい、生命維持に関わる重大な事態を招くこともあります。
たんぱく質や塩分も継続して制限が必要になってきますが、あまりエネルギーが少ないと貧血なども招いてしまうので、治療用特殊食品にある低タンパク質食品のお米やおかゆ、パンなどをうまく取り入れながら継続して治療を行うようにしましょう。
まとめ
腎不全は罹患数も増加傾向にあり、他人ごとではない病気です。早期発見、対策のためにも健康診断を定期的に受けたり、普段の体の変化を見逃さないようにすることが大切です。そして、腎不全になってしまっても、食事と生活習慣に気を使って長く病気と付き合っていけるようにしましょう。