溶連菌感染症の90%以上が、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎です。そのため、溶連菌感染と言えば、多くの場合、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎のことを指します。
この感染症は、かつては猩紅熱(しょうこうねつ)と恐れられ、法定伝染病に指定されていましたが、抗生物質がよく効くため、今は指定を外れています。
ここでは、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の原因・症状・治療法についてまとめていきます。
原因
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、名前にもある「A群溶血性レンサ球菌」に感染することで発症します。
症状
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、3歳から小学生までに典型的な症状が現れる感染症で、3歳未満の乳幼児や大人では、症状が出なかったり、軽かったりすることも多いようです。
症状としては、まず38~39度の発熱と、強いのどの痛みがあり、2~3日後に舌に赤いぶつぶつ(苺舌)が現れます。
また、嘔吐、頭痛、下痢などの風邪に似た症状や、全身にかゆみを伴う発疹が出ることもあります。症状は3~5日で治まることが多く、発疹が出たところは、1週間経つと自然に皮がむけ始めます。
潜伏期間は2~5日で、発症のピークは冬季と5~7月です。咳やくしゃみなどの飛沫や手指などの接触でうつりますので、家庭や学校における集団感染も報告されています。
学校保健安全法では第三種(必要に応じて出席停止の措置をとることができる感染症)に位置づけられています。感染するのは急性期で、解熱すれば感染力はほぼなくなります。
治療法
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、細菌感染症の一種で、抗生物質が良く効きます。有効な抗生物質を内服後24時間で人にうつす恐れはほとんどなくなります。
βラクタム系の抗生物質(ペニシリン系やセフェム系)は、A群溶血性レンサ球菌が耐性を獲得しておらず、効果的であるため、これらの抗菌剤が第一選択薬となります。
これら薬剤にアレルギーがある人には、マクロライド系かリンコマイシン系の抗菌剤が使われます。
しかし、マクロライド系とリンコマイシン系には耐性を示す菌(耐性株)が増えているため、抗菌剤の選択には注意が必要です。抗菌剤の投与は1~2週間ほど続けることが望ましいとされます。
また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、中耳炎、肺炎、骨髄炎、髄膜炎、化膿性関節炎、敗血症などの合併症を引き起こすことがあります。
こうした合併症を防ぐためにも、抗生物質の投与が有効です。またリウマチ熱や急性糸球体腎炎などが起きることもあるので、きちんと治療することが大切です。
最後に
なお、劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症は、同じA型溶血性レンサ球菌が引き起こす感染症ですが、子どもから大人まで感染し、特に30歳以上の大人に多く、致死率が30%と非常に高い感染症で、ここで解説した咽頭炎とは異なる疾患です。